ISO9001:2026運用のスリム化とは?運用改善を実践例で紹介8.1「運用の計画及び管理」について効率化を考える

ISO9001の運用において、多くの製造業企業が悩む課題の一つが「文書作成の負担」です。

特に認証取得や維持審査の準備を進める中で、

「すべての製品についてQC工程図を作成しなければならないのでしょうか?」

という質問を受けることがあります。結論から言えば、

顧客要求や業界固有要求がない限り、すべての製品ごとにQC工程図を作成することはISO9001の要求事項ではありません。

実際には、ISO9001:2026が求めている管理の本質を理解し、自社が既に持っている仕組みを活用することで、文書の量を大幅にスリム化しながらも有効な品質マネジメントシステムを構築することが可能です。

今回は8.1「運用の計画及び管理」の要求事項を題材に、ISO9001運用のスリム化について考えてみます。

目次

QC工程図とは何か

まずQC工程図について整理しておきましょう。QC工程図とは一般的に、

  • 製品番号
  • 図面番号
  • 材料情報
  • 工程区分

などを前提情報として、

受注から

  • 調達
  • 加工
  • 外注
  • 検査
  • 梱包
  • 出荷

までの流れを整理した工程管理資料です。単なる作業手順ではなく、

  • 関係部門
  • インプット情報
  • アウトプット情報
  • 管理ポイント
  • 検査ポイント

なども整理されることが多く、品質保証活動の基本資料として利用されています。そのため、

「ISO9001を取得するなら製品ごとにQC工程図を作るべき」

といったイメージを持っている方もいます。

ISO9001:2026は製品ごとのQC工程図を要求していない

ここで重要なのは、ISO9001の要求事項そのものです。

8.1「運用の計画及び管理」では、

製品・サービスの提供に必要なプロセスを計画し、管理すること

が求められています。また8.5.1「製造及びサービス提供の管理」では、

管理された状態で製造やサービス提供を実施すること

が求められています。しかし、

製品ごとにQC工程図を作成しなければならない

という要求はどこにも記載されていません。つまり重要なのは、

「製品を適切に管理できる仕組みが存在すること」

であり、

「製品別の工程図が存在すること」

ではないのです。

誤解の原因は「文書=証拠」という考え方

ISO9001運用における典型的な誤解として、

「審査で説明するために文書を増やす」

という考え方があります。例えば、

  • 製品A用QC工程図
  • 製品B用QC工程図
  • 製品C用QC工程図

という形で製品ごとに文書を作り続けると、製品数が増えるたびに管理負荷も増大します。しかも、

  • 工程変更
  • 設備変更
  • 外注先変更

が発生するたびに更新作業が必要になります。結果として、

文書管理そのものが目的化してしまうことがあります。

会社全体の工程と製品固有情報を分けて考える

運用をスリム化するために重要なのは、

会社全体の工程の考え方

製品固有の情報

を分けて管理することです。例えば製造業には、

  • 切削加工
  • 溶接
  • 表面処理
  • 組立
  • 検査

など、企業が実施可能な代表的工程があります。まずこれらを基に、会社全体の標準的な工程フローを作成します。

「基本品質計画」や「品質保証体系」を活用する

この全体フローは、

  • 基本品質計画
  • 品質保証体系図
  • 業務フロー図

などの形で作成できます。ここでは、場合により発生する可能性がある工程も含めて整理しておくことがポイントです。例えば、

  • 外注加工
  • 二次加工
  • 工程内検査
  • 受入検査

などが多くの製品によっては不要だったとしても、限定された数品種のみでも実施する可能性があるなら記載しておきます。

この全体フローがあれば、会社の品質マネジメントシステム全体を俯瞰して説明できます。

個別製品の情報は既存資料を参照する

さらに重要なのは、製品固有情報を無理にQC工程図へ集約しないことです。

製造現場には既に、

  • 外注先リスト
  • 設備管理台帳
  • 計測器管理台帳
  • 条件設定表
  • 作業標準書
  • 図面

など、多くの情報資産が存在しています。例えば、

使用設備は設備管理台帳を参照し、

検査方法は図面や検査基準書を参照し、

加工条件は条件設定表を参照する、

という構成ができれば十分です。

現場で使う資料をそのまま活かす

ISO9001運用の本来の考え方は、新しい資料を大量に作ることではありません。むしろ、

現場が既に利用している資料を品質マネジメントシステムの一部として位置付けることにあります。

例えば、全体フローから各資料への参照関係を設定しておけば、製品ごとに新たなQC工程図を作る必要はありません。

現場担当者も、普段使っている資料だけを確認すればよいため、運用とISO文書が一致します。結果として、

  • 文書数のスリム化
  • 管理工数のスリム化
  • 更新作業のスリム化
  • 現場負担のスリム化

につながります。

ISO9001導入企業だけが品質管理をしているわけではない

ISO9001の導入を検討する企業の中には、

「認証取得のために新しい仕組みを作らなければならない」

と考える企業もあります。しかし実際には、

ISO9001を取得していない企業であっても品質マネジメントシステムは存在しています。なぜなら、

品質マネジメントシステムとは、

顧客満足を実現するための仕組み

だからです。品質管理の仕組みが存在しなければ、企業活動そのものが成立しません。

つまりISO9001は、ゼロから仕組みを作ることを求めているのではなく、既に存在する仕組みを整理し、要求事項と対応付けることを求めているのです。

まとめ

ISO9001:2026の8.1「運用の計画及び管理」および8.5.1「製造及びサービス提供の管理」では、製品ごとにQC工程図を作成することまでは要求していません。重要なのは、

  • 工程全体を俯瞰できる品質保証体系や基本品質計画を整備すること
  • 製品固有情報は既存の業務文書と参照関係を持たせること
  • 実際に現場で使われている資料を活用すること

以上によりスリム化を意識することです。

ISO9001:2026の運用スリム化とは、単に文書を減らすことではありません。

自社が既に持っている品質管理の仕組みを活かしながら、ISO9001が求める要求事項に対して最小限の負担で適合させていくことです。

その視点を持つことで、「ISO認証のための文書作り」から脱却し、実態に即した品質マネジメントシステムを構築することができるでしょう。

ISO9001認証取得支援については、ISO9001認証取得支援をご覧ください。

マネジメントシステムのスリム化・再構築支援については、スリム化・再構築支援をご覧ください。

マネジメントシステム文書の統合・スリム化に関しては、こちらのコラムをご覧ください。

マネジメントシステム統合のメリット・デメリットは、こちらのページで詳しくご紹介しています。

複数マネジメントシステムの統合支援は、こちらのページをご覧ください。

この記事の著者/責任者

株式会社アールアンドイー 代表取締役 平間 亮 (Hirama Ryo)

私はこれまで20年以上にわたり、組織のISO等の認証取得支援に関わる中で、「認証取得そのもの」が目的化し、本来の改善活動や企業価値向上につながっていないケースを数多く見てきました。そのような課題を解決したいという思いから、組織の実態に合った仕組みづくりを支援する株式会社アールアンドイーを設立いたしました。現在はISO9001、ISO14001、ISO27001、プライバシーマークをはじめとする各種認証取得支援に加え、CSR調達対応やマネジメントシステムの統合・スリム化支援などを行っています。私たちは「認証を取得すること」ではなく、「組織に根づき成果につながる仕組みをつくること」を大切にし、これからもお客様それぞれの課題に寄り添いながら、実践的な支援を続けてまいります。

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