複数存在するISOマネジメントシステム文書の統合・スリム化の方法とは?

ISO9001、ISO14001、ISO27001など、複数のマネジメントシステム認証を取得している組織では、「文書が増えすぎて管理できない」という悩みを抱えるケースが少なくありません。

特に、

  • 文書管理規程
  • 内部監査規程
  • 教育訓練手順
  • 方針文書
  • 是正処置手順

など、本来は共通化できるはずの運用に対して、複数の文書が存在していることがあります。

こうした状態は、運用の複雑化や維持管理コストの増加につながるため、マネジメントシステムの有効性を高めるうえでも改善が望まれます。

本記事では、複数存在するマネジメントシステム文書を統合・スリム化する方法について解説します。

目次

なぜ同じ運用に関する文書が複数できてしまうのか

マネジメントシステム文書が重複する背景には、認証取得の歴史や組織運営上の事情があります。

例えば、最初にISO9001を取得し、その後ISO14001を取得したケースを考えてみましょう。

この場合、

  • 主管部門が異なる
  • 認証取得時期が異なる
  • コンサルタントが異なる
  • 認証機関が異なる
  • 適用範囲が異なる

といった理由から、それぞれ独立した仕組みとして構築されることがあります。結果として、

「ISO9001版の文書管理規程」と「ISO14001版の文書管理規程」

が並立してしまうことになります。内部監査規程や教育訓練規程なども同様です。

本来は同じ運用で対応できるにもかかわらず、認証ごとに別々の文書が作成されるケースは珍しくありません。

文書間の整合性不足による重複もある

もう一つ発生しやすいのが、改訂時の管理不備です。

例えば上位規程を改訂したにもかかわらず、関連する下位手順書を見直していない場合があります。その結果、

  • 同じ内容が複数の文書に記載される
  • 手順の説明が微妙に異なる
  • 古いルールが残る

といった状態が発生します。

マネジメントシステム導入から年数が経過した企業ほど、このような文書の肥大化が起こりやすくなります。

同じ運用のために複数文書があることの弊害

文書の重複は、単なる保管上の問題ではありません。実際の運用に大きな影響を及ぼします。

手順の違いによる現場の混乱

例えば内部監査規程が複数存在し、

  • ある規程では年1回実施
  • ある規程では年2回実施

という状態になっていたとします。

担当者はどちらを参照すべきか迷うことになります。

また、部署によって異なる手順が採用される場合もあり、組織全体として統一した運用ができなくなります。

改訂時の管理工数が増加する

重複文書がある場合、一つの変更に対して複数文書を見直す必要があります。

例えば文書管理ルールを変更した場合、

  • 文書管理規程A
  • 文書管理規程B
  • 文書管理手順書
  • 内部監査規程

など関連する複数文書の修正が必要になります。

修正漏れが発生すれば、文書間の不整合にもつながります。

教育・周知の効率が悪化する

運用ルールが複数文書に分散すると、教育対象者も理解しづらくなります。

結果として、

  • 文書は存在するが誰も読まない
  • 必要なルールが把握できない
  • 実際の運用が属人的になる

といった問題を招くことがあります。

文書統合・スリム化の進め方

では、どのように文書を統合・スリム化すればよいのでしょうか。

重要なのは、「文書単位」で考えるのではなく、「ISO規格の要求事項」を軸に整理することです。

統合・スリム化のメリット・デメリットとは

ISO認証の統合・スリム化のメリット

  • 文書体系を効率化できる
  • 記録様式や運用タイミングを統一できる
  • 人的資源を有効活用できる
  • 審査工数や費用を削減できる

ISO認証の統合・スリム化のデメリット

  • 責任の所在が曖昧になる可能性
  • 個々の運用が長時間化する
  • 異なる適用範囲の認証を無理に統合すると、運用が複雑になる懸念

ISO認証の統合・スリム化のメリット・デメリットの詳細については、こちらのコラムをご覧ください。

要求事項との関係を整理する

最初に実施したいのがマッピング作業です。例えば、

  • 文書管理
  • 内部監査
  • 教育訓練
  • リスク管理
  • 是正処置

などの要求事項ごとに、「どの文書がその要求事項をカバーしているのか」を一覧化します。すると、

  • 一つの要求事項に複数文書が存在する
  • 同じ手順が複数箇所に記載されている

といった重複部分が見えてきます。

また逆に、「この要求事項に対応する文書が存在しない」という不足箇所が発見されることもあります。

重複文書を比較する

次に、それぞれの文書を比較しながら、

  • 本当に別文書である必要があるのか
  • 共通ルール化できないか
  • 片方に統合できないか

を検討します。例えば文書管理規程であれば、品質マネジメントシステムも環境マネジメントシステムも同じ運用ルールで管理できることが多くあります。

その場合は、「統合文書管理規程」として一本化できる可能性があります。

文書化の必要性も見直す

文書のスリム化では、「そもそも文書として残す必要があるのか」という視点も重要です。確認すべきポイントは、

  • ISO規格が文書化を要求しているか
  • 運用上明文化が必要か
  • 教育や引継ぎに必要か
  • リスク防止に役立つか

です。

規格上要求されていないうえに現場でも参照されていない文書であれば、廃止を検討できる場合もあります。

スリム化とは、単に文書を減らすことではなく、必要な文書だけを適切に残すことを意味します。

文書統合時の注意点

ただし、すべての文書が統合できるわけではありません。特に注意したいのが適用範囲の違いです。例えば、

  • 本社のみ対象の仕組み
  • 工場のみ対象の仕組み
  • 特定事業だけ対象の仕組み

といった場合には、運用自体が異なることがあります。

また、

  • 法令要求
  • 顧客要求
  • 業界固有ルール

などにより、個別文書の維持が必要になることもあります。

文書を減らすことを目的化せず、運用の実態に適した形を目指すことが重要です。

統合マネジメントシステムの視点が重要

近年はISO9001、ISO14001、ISO45001、ISO27001など複数規格を統合的に運用する「統合マネジメントシステム(IMS)」の考え方が普及しています。

各規格は共通のHLS(Harmonized Structure)に基づいているため、

  • 文書管理
  • 内部監査
  • マネジメントレビュー
  • 教育訓練
  • 是正処置

などは共通運用しやすくなっています。そのため、規格ごとに文書を増やし続けるのではなく、統合管理を前提として見直すことが効果的です。

まとめ

マネジメントシステム文書が増えすぎる背景には、認証取得の経緯や部門ごとの独立運用、改訂管理の不足などがあります。しかし、同じ運用に対して複数文書が存在すると、現場の混乱や管理工数の増加、不整合の発生といった問題を招きます。

改善するためには、ISO規格の要求事項を軸として全体を整理し、どの文書がどの要求事項を担っているのかを可視化することが重要です。そのうえで、重複する文書の統合や不要な文書の廃止を検討し、スリムで分かりやすいマネジメントシステムへと見直していくことが望まれます。

文書の統合・スリム化は単なる削減活動ではありません。組織が運用しやすく、維持しやすいマネジメントシステムを構築するための重要な改善活動なのです。

既存のマネジメントシステム文書のスリム化・再構築支援のページはこちら。

複数マネジメントシステムの統合支援のページはこちら。

この記事の著者/責任者

株式会社アールアンドイー 代表取締役 平間 亮 (Hirama Ryo)

私はこれまで20年以上にわたり、組織のISO等の認証取得支援に関わる中で、「認証取得そのもの」が目的化し、本来の改善活動や企業価値向上につながっていないケースを数多く見てきました。そのような課題を解決したいという思いから、組織の実態に合った仕組みづくりを支援する株式会社アールアンドイーを設立いたしました。現在はISO9001、ISO14001、ISO27001、プライバシーマークをはじめとする各種認証取得支援に加え、CSR調達対応やマネジメントシステムの統合・スリム化支援などを行っています。私たちは「認証を取得すること」ではなく、「組織に根づき成果につながる仕組みをつくること」を大切にし、これからもお客様それぞれの課題に寄り添いながら、実践的な支援を続けてまいります。

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