ISO14001:2026改訂のポイント7.4「コミュニケーション」にはどのような対応が必要?

目次

結論

客観的に見ても、維持しておくことが妥当と考えられる文書や記録を、必要なときに利用できる状態にしておきましょう。

ISO14001:2026改定では、7.4「コミュニケーション」に関する要求事項に重要な見直しが行われました。

一見すると小さな文言修正ですが、

組織の説明責任(Accountability)をより重視する方向への変更

と考えることができます。

環境マネジメントにおけるコミュニケーションとは

環境マネジメントシステムにおけるコミュニケーションには、さまざまなものがあります。

内部コミュニケーションの例

例えば、

  • 環境目標に関する会議
  • マネジメントレビュー
  • 環境側面評価の見直し
  • 法改正情報の共有
  • 手順書改訂の周知
  • 内部監査結果の報告
  • 緊急事態訓練(避難訓練など)

などが挙げられます。

外部コミュニケーションの例

例えば、

  • 監督官庁との質疑応答
  • 法規制に関する問い合わせ
  • 消防署との連携
  • 地域住民からの苦情対応
  • ISO審査機関との審査対応
  • 顧客からの環境に関する要求事項への対応

などが考えられます。

2015年版との違い

ISO14001:2015では、コミュニケーションに関する記録について、

必要に応じて文書化した情報を保持しなければならないと規定されていました。つまり、

「何を記録として残すか」

については組織の判断に委ねられる部分が大きかったと言えます。

2026年版の変更点

ISO14001:2026では、

「必要に応じて(as appropriate necessary)」

という考え方から、

「適切な(appropriate)」文書化した情報

という表現へ変更されました。

「必要」と「適切」の違い

この変更は非常に重要です。

2015年版の考え方

  • 自社が必要と判断した記録を残す

という考え方でした。

2026年版の考え方

  • 客観的に見て残すべき記録を残す

という方向性が強くなっています。つまり、

「自社では必要ないと考えた」

だけでは十分な説明にならない可能性があります。

なぜこの変更が行われたのか

ISO14001は、ISO9001やISO27001と比較すると、

法令順守との結び付きが非常に強い規格

です。例えば、

  • 廃棄物管理
  • 排水管理
  • 大気汚染防止
  • 騒音規制
  • 化学物質管理

など、多くの場面で法規制が関係します。そのため、環境コミュニケーションの内容は単なる情報共有ではなく、法令順守や社会的説明責任の証拠となる場合があります。

ISO9001やISO27001との違い

同じ7.4「コミュニケーション」でも、ISO9001:2015やISO27001:2022では、コミュニケーションの仕組みを決めることは求められていますが、コミュニケーションの記録を保持する要求は明確には規定されていません。

一方でISO14001は、従来からコミュニケーションに関する記録保持を要求してきました。

今回の改定は、その考え方をさらに強化したものと考えられます。

実務上どのような対応が必要か

法令対応の記録を残す

例えば、

  • 行政への届出
  • 行政機関とのやり取り
  • 法改正対応の検討記録

などです。これらは後日、法令順守を説明するための重要な証拠になります。

苦情対応記録を残す

地域住民や取引先からの苦情について、

  • 受付内容
  • 調査結果
  • 是正対応
  • 回答内容

などを記録しておくことが重要です。

緊急事態対応の記録を残す

例えば、

  • 緊急事態訓練
  • 漏えい事故対応
  • 環境事故対応

などについて、訓練結果や改善内容を記録しておくことが望まれます。

会議体の記録を見直す

すべての会議を詳細に記録する必要はありませんが、

環境パフォーマンスや法令順守に影響する重要な意思決定については、

記録として残すことを検討すべきでしょう。

改定から読み取れるメッセージ

今回の改定が伝えたいことは、

「記録があること」ではなく、「説明できること」が重要である

という点です。環境マネジメントシステムの審査や行政対応において、

  • 適切に対応した
  • 適切に検討した
  • 適切に周知した

ことを説明できるようにしておくことが求められています。

まとめ

ISO14001:2026の7.4「コミュニケーション」では、2015年版の「必要に応じて文書化した情報を保持する」から、「適切な文書化した情報を利用可能な状態にする」方向へ考え方が強化されました。

この変更は、

組織自身の判断だけでなく、客観的に見ても保存が妥当な記録の維持を求めるもの

と考えられます。そのため、

  • 法令対応記録
  • 行政とのやり取り
  • 苦情対応記録
  • 緊急事態対応記録
  • 重要な環境会議の記録

などについて、

環境マネジメントに関する説明責任を果たせる状態で維持すること

が求められます。ISO14001:2026への対応としては、「自社が必要と思うから残す」ではなく、

「第三者から見ても説明責任を果たすために必要な記録を残す」 という視点で、現在の文書・記録管理を見直すことが重要と言えるでしょう。

JISQ14001:2026が発行されました。

https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+Q+14001%3A2026

ISO14001:2026への移行支援なら、アールアンドイーにお任せください。

ISO14001:2026運用から移行審査までの流れについては、ISO14001:2026運用から移行審査までの流れをご覧ください。

ISO14001:2026変更点の全体像は、ISO14001:2026改訂ポイントや新しい要求事項への対応をご覧ください。

この記事の著者/責任者

株式会社アールアンドイー 代表取締役 平間 亮 (Hirama Ryo)

私はこれまで20年以上にわたり、組織のISO等の認証取得支援に関わる中で、「認証取得そのもの」が目的化し、本来の改善活動や企業価値向上につながっていないケースを数多く見てきました。そのような課題を解決したいという思いから、組織の実態に合った仕組みづくりを支援する株式会社アールアンドイーを設立いたしました。現在はISO9001、ISO14001、ISO27001、プライバシーマークをはじめとする各種認証取得支援に加え、CSR調達対応やマネジメントシステムの統合・スリム化支援などを行っています。私たちは「認証を取得すること」ではなく、「組織に根づき成果につながる仕組みをつくること」を大切にし、これからもお客様それぞれの課題に寄り添いながら、実践的な支援を続けてまいります。

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