ISO45001:2018要求事項の考察6.1.1「リスク及び機会への取組み(一般)」にはどのような対応が必要?

目次

結論

「OHSMSの変更が生じる前」にも忘れずに、危険源を考慮したリスク及び機会を決定し、評価することが必要です。

ISO45001:2018の6.1.1は、労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)において取り組むべきリスク及び機会を決定することを求めています。

他のISOマネジメントシステム規格にも共通する要求事項ですが、ISO45001には労働安全衛生特有の重要な視点があります。それが、

「危険源(Hazard)」を考慮すること

です。

6.1.1が求めていること

ISO45001では、

  • 4.1 組織の状況
  • 4.2 利害関係者のニーズ及び期待
  • 4.3 OHSMSの適用範囲

を踏まえた上で、労働安全衛生に関するリスク及び機会を決定することが求められています。

この点は、ISO9001やISO14001などのマネジメントシステム規格と共通しています。

ISO45001の特徴は「危険源」

ISO45001で特徴的なのは、リスク及び機会を決定する際に

危険源(Hazard)

を考慮することを求めている点です。危険源とは、労働者の負傷や疾病につながる可能性のある要因を指します。

代表的な危険源の例

機械・車両

  • 回転部による巻き込み
  • 重量物による挟まれ事故
  • 高温設備による火傷
  • 騒音による聴力障害
  • 溶接光やレーザーによる視力障害
  • 燃料による火災

工場・倉庫

  • 高所作業による墜落
  • 階段や段差による転倒
  • ピットや溝への転落
  • 暗所作業による事故

化学物質・溶剤

  • 酸素欠乏
  • 有害物質への暴露
  • 薬剤飛散による皮膚障害
  • 漏えいによる火災

作業手順

  • 危険作業
  • 高所作業
  • 重量物運搬

人に起因する要因

  • 経験不足
  • 教育不足
  • 疲労
  • ストレス
  • 人間関係

危険源を考慮したリスク及び機会とは

例えば、フォークリフトを利用する倉庫であれば、

リスク

  • 接触事故
  • 転倒事故

機会

  • 動線分離
  • 運転資格教育の強化
  • 安全装置導入

などが考えられます。

単に危険を洗い出すだけでなく、改善の機会を見出すことも重要です。


OHSMS変更時の評価が重要

6.1.1のもう一つの特徴は、

OHSMSの変更に伴うリスク及び機会の評価

を強く要求していることです。

「変更前」に評価することが要求される

ISO45001では、

  • 永続的変更
  • 一時的変更

のいずれであっても、

変更の実施前に評価すること

が求められています。これは非常に強い要求事項と言えます。

なぜ変更前なのか

変更後に問題が発生してから対応するのではなく、事前に影響を把握し、事故や健康障害を予防することが目的です。

具体的な変更事例

適用範囲の変更

例えば、危険源を多く含む拠点が適用範囲から外れる場合、適切な管理が行われなくなるリスクがあります。

組織体制の変更

安全管理の中心人物が異動や退職により不在となる場合、知識や経験が失われる可能性があります。

新規事業の開始

新しい設備や作業が導入されれば、新たな危険源の特定が必要になります。

法改正への対応

新たな法規制への対応として、作業手順や安全管理方法の変更が必要になる場合があります。

ISO14001やISO27001との共通点

近年のISO規格では、変更管理の考え方が重視されています。

例えば、

  • ISO27001:2022
  • ISO14001:2026

では「変更の計画」に関する要求が強化されています。

ISO45001はその流れを先行して取り入れ、変更前の評価を明確に求めています。

実務上どのような対応が必要か

危険源を継続的に特定する

定期的に、

  • 作業内容
  • 設備
  • 使用物質
  • 作業環境

を確認します。

変更管理手続へ組み込む

例えば、

  • 新設備導入
  • システム変更
  • 組織改編
  • 新規業務開始

の際に、労働安全衛生リスク評価を必須にします。

管理職を巻き込む

業務変更を決定する管理職が、OHSMSへの影響評価を理解していることが重要です。

記録を残す

変更時のリスク評価結果を文書化しておくことで、審査時の説明もしやすくなります。

まとめ

ISO45001:2018の6.1.1「リスク及び機会への取組み(一般)」では、組織の状況や利害関係者の要求事項に加え、

危険源を考慮したリスク及び機会の決定

が求められています。また、

OHSMSの変更が生じる前に、その変更がもたらすリスク及び機会を評価すること

も重要な要求事項です。

そのため組織には、

  • 危険源の継続的な特定
  • リスク及び機会の評価
  • 新規事業や設備導入時の事前評価
  • 変更管理手続への組込み

が求められます。

特に、

「変更してから評価する」のではなく、「変更する前に評価する」

という視点を持つことが、ISO45001:2018の6.1.1を理解するうえで重要なポイントと言えるでしょう。

ISO45001認証取得支援については、ISO45001認証取得支援をご覧ください。

マネジメントシステム文書の統合・スリム化に関しては、こちらのコラムをご覧ください。

マネジメントシステム統合のメリット・デメリットは、こちらのページで詳しくご紹介しています。

複数マネジメントシステムの統合支援は、こちらのページをご覧ください。

この記事の著者/責任者

株式会社アールアンドイー 代表取締役 平間 亮 (Hirama Ryo)

私はこれまで20年以上にわたり、組織のISO等の認証取得支援に関わる中で、「認証取得そのもの」が目的化し、本来の改善活動や企業価値向上につながっていないケースを数多く見てきました。そのような課題を解決したいという思いから、組織の実態に合った仕組みづくりを支援する株式会社アールアンドイーを設立いたしました。現在はISO9001、ISO14001、ISO27001、プライバシーマークをはじめとする各種認証取得支援に加え、CSR調達対応やマネジメントシステムの統合・スリム化支援などを行っています。私たちは「認証を取得すること」ではなく、「組織に根づき成果につながる仕組みをつくること」を大切にし、これからもお客様それぞれの課題に寄り添いながら、実践的な支援を続けてまいります。

目次